健康診断って本当に必要なの?【女医が解説】「かかりつけ医には聞けないコト」Q&A
さまざまな理由で病院に行くことがあると思いますが、病気や健康のことについて、かかりつけ医であっても聞きづらいことってありますよね。今回は「anan Beauty+」に寄せられた健康や病気に関する質問をもとに、産婦人科専門医の筆者がお答えしていきます。
健康について
Q.特定の病気ではない、なんとなくの不調のケア方法はありますか?
自分ではなんとなくの不調で原因がないように思っているかもしれませんが、実は不調の原因となる病気が隠れていることがあります。症状が持続する場合、まずは病院を受診して適切な検査を受けてみるのがおすすめです。
それでも特に異常がないとされた場合は、食生活や運動、睡眠習慣などを見直してみましょう。足りない栄養素がある場合は、サプリメントを有効利用するのもおすすめです。
Q.40代を前にしておくべき健康法は?
40代というと、徐々に女性ホルモンが減少し、更年期にさしかかってくる年代です。そのため、女性ホルモンの減少による症状が出てくる人もいらっしゃいます。そういった場合は、女性ホルモン様作用をしてくれるような食品を取り入れていくのがおすすめです。例えば、大豆イソフラボン。エストロゲンに似た働きをすることで、女性特有の不調を改善する作用が期待されています。大豆イソフラボンは、豆腐や納豆、おから、味噌などの食品に含まれています。
また、どの年代にも言えることですが、健康法の基本は、食事、運動、睡眠、そしてストレスを適切にケアすることです。それぞれの方の体質や個人差があるので、どれに重きをおくべきかについては一概には言えませんが、今まで以上に質にこだわるのがおすすめです。
例えばアンチエイジングには、糖質を摂取しすぎないことが大切だと言えます。運動についても、年齢にあわせた強度で習慣化することが大切です。
健康診断について
Q.健康診断で追加した方がいいオプションはありますか?
健康診断や各種がん健診は、エビデンスがあるものが自治体健診などで採用されています。すべての人にすすめられるようなオプションはありませんが、ご自身の家族歴で多く見られる病気や気になる病気があれば、それに対するチェックを追加してもよいかもしれません。
例えば、胃がん家系であればピロリ菌をチェックしてみたり、バリウム健診ではなく胃カメラ健診を一度はしてみるなど。大腸がん家系であれば便潜血検査だけではなく、大腸内視鏡を一度は行ってみるというのもいいですね。
Q.健康診断は年に1回で足りるの?
基本的には1年に一回で問題ないでしょう。世の中には、数か月で進行してしまい致命的になってしまう膵臓がんなどの病気があるのは事実ですが、数か月おきに全員が健康診断を受けていたらすごく費用がかかります。また、それだけこまめに健診をしても、それによる早期発見効果が健診の費用や時間の負担を上回らないので、年一回というのが妥当な頻度ということになっています。
年に1回の健康診断を受けるとともに、日々の生活の中で自分の体調の変化に耳を傾け、もし異常があった場合には、早めに受診するようにするのがいいですね。
Q.ピロリ菌など、実はしておいたほうがいい検査ってありますか?
ピロリ菌のチェックは、ぜひ若いうちから行っておくといいですね。ピロリ菌は幼児期までに感染し、それ以降の年代で感染することは稀といわれています。感染者の年齢が上がるとともに、ピロリ菌による胃のダメージが蓄積し、胃がんのリスクが高まるでしょう。
実際に、中学生を対象としたピロリ検診も、一部の自治体で行われています。また、大学生以降の年代でピロリ菌が陽性だった場合は、除菌とともに一度は胃カメラをしておいたほうが安心ですね。
自治体健診などで胃がんリスク検査(ABC検診)がある場合は、それでピロリ菌のチェックができます。また、萎縮性胃炎と診断されている場合はピロリ菌の検査は公的医療保険でできることも。それ以外の方のピロリ菌検査は自費になりますが、胃がん予防のためにぜひピロリ菌のチェックをおすすめいたします。
Q.20~30代で、健康診断以外に自分で受けた方がいい健診はありますか?
ピロリ菌のチェックをぜひおすすめいたします。また、乳がんや卵巣がん、大腸がんなど遺伝性が指摘されているがんの家系の方であれば、早期から定期的なチェックを行うのが有効かもしれません。
あとは、女性は子宮頸がん検診は20歳から2年ごとにしっかり受けるのがよいですね。子宮頸がんワクチンを接種済の方も、同様に2年ごとの検診が推奨されています。20代でも子宮頸がんを発症し、命に関わる事態になったり、子宮を摘出しなければならなくなり出産ができなくなるといった例は実際にあります。早期発見すれば子宮を摘出しなくても済む治療がありますので、ぜひ検診をおすすめいたします。
Q.人間ドックでの胃カメラが辛いのですが、本当に毎年必要なのでしょうか?
胃の状態によって大きく事情が異なるため、一概には答えられないところです。ピロリ菌感染の歴がなく、粘膜の状態も良好で、胃カメラで異常なしの胃であれば、必ずしも毎年チェックしなくても良いかもしれません。一方で、例えば慢性胃炎や萎縮性胃炎などピロリ菌によるダメージが蓄積している方であったり、胃潰瘍や逆流性食道炎などのトラブルを起こしたことがある方などは定期的にチェックしたほうがよいでしょう。
また、ピロリ菌を除菌した方は胃がん発症のリスクは下がるものの、ピロリ菌によるダメージはある程度残ってしまう場合があります。除菌後でも、それまでに蓄積したダメージの状態によっては胃がんが発生する恐れも。主治医と相談して、必要に応じて定期的なチェックを続けるのが望ましいですね。
Q.「バリウムを飲んでも胃がんなどの異常はわからない」と聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
バリウムを飲むことによる、胃がんのX線検査のことですね。バリウムによる造影法(胃の中の様子を写真に写す方法)は、凹みがあってバリウムが溜まったり、あるいは凸があってバリウムの流れがそこを避ける様子などから、胃がんなどの異常を判定していきます。つまり、ある程度進行して凸凹をつくった胃がんはこの検診で見つけることができます。ですので、何もわからないという訳ではありません。
一方で、凸凹をつくる以前の早期胃がんを発見するのは難しい場合もあります。こうした病変は胃カメラで調べたほうが早期発見できる可能性があります。
Q.健康診断の前日に絶対に食べないほうがいいものは?
健康診断の前にビタミンCを摂りすぎると、検尿結果のうち、ブドウ糖、潜血、ビリルビン、亜硝酸の項目に影響があり、本来陽性になるところがビタミンCの影響で陰性化してしまう場合があります。健康診断の2~3日前からは、サプリなどでビタミンCを多く摂取するのは控えるのが安心。また、健康診断の前日の夕食は、早めの時間に軽めにすませるほうがいいでしょう。
Q.診察のときに着ていかないほうがいい服は?
診察を受ける科によります。例えば産婦人科であれば内診が必要な場合がありますが、前室で着替えていただくようになっていますので、服装に大きな制限はありません。ただ、ブーツやタイツなど、脱ぎ履きしにくい服装だと少し大変かもしれませんね。
一般的な健康診断であれば、胸部の聴診があります。また、腹部の診察やエコー検査がある場合もあります。ワンピースなど継ぎ目のない服だと大変だと思うので、着脱しやすい上下セパレートの服を選びましょう。女性はストッキングやタイツだと心電図の電極がつけられないため、ソックスにしたほうがいいですね。胸部レントゲンを撮影する際はブラジャーがあるとホックなどの金属部分が映り込んだりするため、外すよう指示される場合があります。ブラトップなどもカップ部分の形が映り込んだりするため、不可とされる場合も。
一方で、健診医療機関ではあらかじめ検査着に着替えてから健診がスタートするところも多く、その場合はあまり服装を気にする必要はないでしょう。ご自身が健診を受ける医療機関へ、検査着の有無や、服装の注意点などあらかじめ確認しておくと安心ですよ。
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著者情報
ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは3人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は15万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
YouTube:https://www.youtube.com/c/mama女医ちえこ