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突如襲うイライラ…プロが教える「自分の心のコントロール方法」

ちょっとしたことでついカッとなってしまったり、怒ってしまった自分を責めてしまったり…自分の心をうまくコントロールできずに悩んでいる方は少なくありません。そこで今回は、公認心理師で眠りとお風呂の専門家、SleepLIVE(株)代表の小林麻利子さんに、イライラの対処法を伺いました。

1. イライラすると、美容や健康へも悪影響が及ぶ

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イライラしている状態というのは、自律神経の交感神経が刺激され、末端の血管は収縮し、血液中の酸素状態は悪くなり、筋肉も萎縮している状態。

攻撃ホルモンとも言われるアドレナリンが分泌し、ストレスホルモンであるコルチゾールも分泌。イライラすることで、さらにカラダ全体がイライラ状態になります。ただイライラしているだけでなく、例えばコルチゾールが分泌するとビタミンCが使われてしまうので、美容や健康面でも支障が出てしまいます。

2. まずは睡眠負債を解消する

一にも二にも睡眠。寝不足状態では、ついイライラしてしまう、という経験がある方は少なくないはず。しかし、平日6時間以下睡眠で、土日にそれを補うよう長く寝ているような睡眠負債が蓄積している状態では、睡眠不足状態が当たり前になっており、それがメンタル面に影響を及ぼしているとは、なかなか思えないでしょう。

しかし、質の高い睡眠をとっていなければ、論理的思考に関係のある、脳の前頭連合野がしっかりと機能修復されず、思うように自分自身のメンタルをコントロールすることができません。

まずは、睡眠負債を解消するべく、可能なら3連休のタイミングで「平日と同じ時刻」に就寝し、アラーム時計をつけずに就寝、それを3回繰り返し、最後の日の睡眠時間をメモしておきます。その時間を目安に、起床時刻から逆算し、就寝時刻を定めて、おやすみしてみてください。

イライラした時の対処、というより、そもそもイライラしない自分を作ることが大切です。

3. イライラした時にまずは「自覚する」

イライラしたとき、通常は、そのイライラしている自分自身に気づくことなく、当たり前にその感情に浸り、対処なく、その感情が過ぎ去るのを待つのみであることが多いです。しかしその状態では、自分自身をさらに苦しめてしまうことも大いにあります。

まずはイライラしている自分に気づくことが大切。当たり前に引き起こる感情の変化と受け止めるのではなく、「あぁ、今、私はイライラしているんだ」と自覚することが大切です。またそれは、ただ心の中で唱えるよりも、声に出したり、お腹や脚を軽く叩いたり、両手を大きく動かしたりして、自分のその状態を気づかせるアクションをとることが大変重要です。

例えば、イライラしたら、その直後に、「あぁストレス状態だ!」と口で言いながら、両手で太ももを4回リズミカルに軽く叩いてみてください。声に出して、心の中に抱いた思いをアウトプットして、耳に入れるインプットを行います。また叩くことで骨格筋を作用させ、叩かれた皮膚表面の血流がアップすることで、カラダに変化が引き起こります。

人は自覚をしなければ、なかなか次の行動に移すことができません。声に出してカラダを変化させて、カラダ全体でイライラ状態を自覚していきましょう。もし電話中や接客中ならば、口には出さず、心で唱えながら、自分の脚を叩いたりと、カラダを動かして気づかせてみましょう。

4. 深呼吸 3秒吸って2秒息を止めて5秒かけて吐く

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自覚した後は、イライラを収めようと思わなくてOK。というのは、イライラを自分の心のコントロール等で小さくしたり、心地よくしたりと、感情を自分自身で変えることは不可能だからです。しかし、自分の行動によって、イライラしてしまった体の機能自体を変えることは可能です。

例えば、深呼吸をしてみましょう。イライラして交感神経が刺激されている状態から、3秒吸って2秒息を止めて5秒吐く。吐く息が長くなることで副交感神経が刺激されますし、息を一時的に止めることで吐く時に体の緊張も解きやすくなります。つまり、イライラしている時の体を、深呼吸によって、交感神経から副交感神経へ切り替えることが可能になります。

結果、アドレナリンの分泌が抑えられて、徐々に感情が楽になっていきます。感情を変えようと頑張るのではなく、まず行動に移すこと。そうすることでカラダが変わり、心が変わっていくのです。

5. 場所を変えたりストレッチをしよう

3や4は、イライラの原因となった人が目の前にいるときも、その人に気づかれずに行うことが可能です。例えば電話中にイライラしてしまったら、心の中で唱えることも、自分の脚を軽く叩いていることも、深呼吸を繰り返していることも、相手は気づきません。
とにかく具体的に行動に移すことが大変重要です。

その後、その場を離れることができるのであれば、その場から離れて違う所に移動します。自宅で子どもにイライラしてしまったら、子どもの安全を確保したのち、自分だけベランダやトイレに移動する、とか、接客中にイライラしたら、様子をみて、外に一時的に移動するなどです。これらは逃げではありません。れっきとした、正しいストレス対処法です。

その際に、両手を上に伸ばしたり、横に倒したり、腰を回したりして、ストレッチをしましょう。イライラしていると肩が上に上がって、筋肉が萎縮してしまいます。ストレッチをしながら、先ほどの4の呼吸法をあらためて行うことで、どんどんカラダが変化していき、さらに心も落ち着いていくはずです。

寝る前は、お風呂にしっかり浸かって、ベッドの上で、好きな香りやキャンドルを灯したり、マッサージをしたり心をさらに鎮めてから、おやすみしてみてください。イライラは性格の問題と諦めず、毎度適切に対処していくことで、本当に楽に生きていけるようになります。ぜひ、試してみてくださいね。

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眠りとお風呂の専門家
小林麻利子さん

同志社大学卒業、京都市出身。SleepLIVE株式会社代表取締役社長。生活習慣改善サロンFlura主催。公認心理師。科学的根拠のあるデータや研究を元に、睡眠と入浴を中心とした生活習慣を見直すことで、自律神経を改善していく指導が人気。約3,000名以上もの悩みを解決し、テレビや雑誌など、多くのメディアで活躍中。不規則な生活になりがちな、芸能人やモデル、アナウンサーへも指導。

企業向けには、健康経営や睡眠関連事業支援などを行う。著書に『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)『不美人習慣を3日で整える熟睡の練習帳』(G.B.)など多数。プライベートは、3歳児と0歳児の母。

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