「家族葬」や「リモート葬」の香典額は?【葬儀屋監修】いまどきのお葬式マナー
家族葬やリモート葬などの新しい葬儀や法事の形が定着しつつある今、香典マナーはどうなっているのか、知っておきたいものです。今回は仏事の専門家に今どきの香典マナーを教えていただきます。また新しい弔いの形を提案するサービスもご紹介します。
家族葬の香典マナー【親族の場合】
近年、葬儀や法事などは、身内だけで行われることが増えていますが、参列する際には香典はどのくらいの金額が必要なのか、不安になりませんか? またコロナ禍の影響もあってリモート葬や法事などの新しいお悔やみの形も生まれています。
今回は、仏事関連総合サービスを展開し、葬儀や法事マナーを伝えている「メモリアルアートの大野屋」(以下、大野屋)の担当者に、香典の額から新しい時代の香典マナーをうかがいます。
まずは家族や親族が亡くなったときに家族葬を執り行う場合の香典の額から。家族葬とは、家族や親族、ごく親しい人だけの少人数で行う葬儀のことです。
身内に送る香典の額は、従来の一般的な葬儀と違いはあるのでしょうか。大野屋の取締役執行役員 セレモ事業本部長 横田 智一さんは、家族葬であっても、基本的には金額は変わらないと話します。
葬儀における香典の額の相場
- 両親が亡くなったとき:3万円~10万円
- 兄弟姉妹など親族が亡くなったとき:3万~5万円、10万円
横田さん 両親が亡くなった場合は、長男長女は10万円、次男次女以下の方であれば3万から7万円が相場です。お母様もしくはお父様に対して包みます。
兄弟姉妹など親族が亡くなった場合は、3万から5万円が相場です。生前、とても慕っていたお兄様やお姉様が亡くなられたときなど、特別な思いがある場合には10万円を包むこともあります。
金額は変わりませんが、家族葬の場合、喪主の方の希望で香典は一切なしとすることもあります。参列者の方々に負担をかけたくないという思いもありますし、近年は葬式代を故人の遺産でまかなえることが、昔と比べて増えたことも理由です。家族葬の場合は特にそれぞれの都合で行うため、香典をお送りしてよいか、事前に聞くのもよいでしょう。
ーーちなみに四十九日や一周忌、お盆、お彼岸などの法事においては、次の金額が相場だそうです。
法事における香典の額の相場
- 両親:1万~3万円
- 兄弟姉妹:1万円~3万円
- おじおば:1万円
家族葬の香典マナー【知人の場合】
ーー知人・友人・上司などが亡くなって家族葬で葬儀を行うことを知った場合、香典はどのようにするのがよいのでしょうか。
横田さん 家族葬の場合、それぞれのご家族によって都合が変わりますので、まず参列できるか確認したほうがよいでしょう。
一般的には、会社の場合、香典の額が統一されているところもあります。役職についていない方は3~5千円、役職についている方や自分の上司の場合は1万円や3万円などが多いです。
現状は、葬儀を行う側と参列側の双方が迷っている状況です。葬儀を行う側は会社関係の方を呼ぶべきか、参列側は参列してよいものかということに悩んでいます。昔のように、町内会や近所の方がどのような葬儀を行うべきかアドバイスをくださることも減っていますので、独自の考えで葬儀を行っているケースが多いです。
ですから、家族葬を行うことを知ったら、直接、参列が必要か、香典を送ってよいかを確認するのが一番よいと思います。
葬儀の欠席時やリモート葬の香典は?
ーー一般的な葬儀にやむを得ず欠席する場合や、リモート葬への参列の場合、香典はどうすればよいのでしょうか?
横田さん 本来、参列できない場合は弔電(ちょうでん)を送ります。弔電とは、通夜や葬儀・告別式へ参列できない場合、お悔やみの気持ちを伝えたいときに送る電報のことです。
生前、とてもお世話になった方には、弔電と香典をセットにして書留で送るのが一般的です。弔電と香典両方送るかどうかは、故人との関係性によって変わります。
リモート葬の場合は、家族葬と同様、香典を受け付けるかどうかは喪主の方のお考えによって変わりますので、送ってよいかを確認しましょう。金額は一般的な葬儀の際と同様でよいです。
ーー葬儀や法事などは身内で少人数で行われることも多くなったため、それぞれ独自のやり方で行われる傾向にあるようです。これからは、これまでのマナーを踏襲しつつ、臨機応変にお相手に合わせることが大切になってきそうです。
新しい弔いの形を提供するサービス
ーー近年、新しい弔いの形を提供するサービスが生まれています。2つのサービスを見ていきましょう。
「私とみんなの法事サービス ~リビング法事~」(メモリアルアートの大野屋)
大野屋は、新しい家族葬のかたちとして家族葬専用式場にて「リビング葬」を提供していますが、「リビング法事」のサービスも開始しました。提供のきっかけは、コロナ禍を通じて直面した「弔い不足」です。喪主や参列できなかった人による心残りや後悔を感じる思いが広がっている背景にあります。
「弔い不足」を解消するため、葬儀のアフターサービスとして、これまでの法事にはない、自宅にいるかのようなゆったりした空間で思い出を語り合う弔い直しの場を用意。故人が好きだったメニューをお食事に追加したり、故人ゆかりの品を持ち寄り祭壇に飾ったり、故人の趣味を思いながらワークショップを実施したりなど、残された方々の想いに寄り添った法事を執り行うことができます。
大野屋で葬儀を行った人であれば利用できるので、機会があれば弔い直しを検討してみるのもよさそうです。
「エンディングハウス」(燦ホールディングスグループ)
燦ホールディングスグループは、家族葬など小規模な葬儀に特化したブランド『エンディングハウス』を今年3月にスタート。葬儀が小規模・簡素化志向へとシフトしている背景から生まれました。
90年にわたる歴史で培ったノウハウに基づくプロによる上質なサービスを、リーズナブルな価格で提供しているのが特徴です。葬儀プランは「家族葬」「一日葬」「お別れ葬」の3つで、新しい会館で執り行えます。
「お別れ葬」は、通夜・告別式を行わないシンプルなプランのこと。これまでの伝統を重んじる葬儀ではなく、シンプルかつ小規模で大切な人を送り出したいという場合には、このサービスが適しているかもしれません。
ーー葬儀や法事などの弔いごとは年々変化しています。これまでのマナーは守りながら、うまく変化に対応していきたいですね。
Information
<筆者情報>
椎原茜
ライター。ライフスタイル、エコ、美容・健康、マネーなどのジャンルで執筆中。専門家取材の記事を通して、女性の読者の方々に正しい知識を知ってもらい、生活に役立ててもらうことを目指している。
(C)フォト うまいもん/AdobeStock