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もう老け見えしない! 専門医が教える「アンチエイジング効果」もある熱中症対策

連日の厳しい暑さに加えて、コロナ禍におけるさまざまな自粛による活動量の低下等で2021年の夏は特に熱中症のリスクが高いそう。誰もが注意すべき熱中症、その対策に実はアンチエイジング、つまり老化を防ぐ要素が詰まっているのをご存知でしょうか。日本抗加齢医学会専門医の竹中奈織先生が、アンチエイジングにもつながる熱中症対策を教えてくれます。

熱中症対策で知らない間にアンチエイジング効果

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毎日暑い日が続き、ニュースでも最高気温記録更新や熱中症アラートという言葉が当たり前になってきました。加えて自粛生活も長引き、活動量の低下に伴い筋肉や体力も低下し、今年は例年よりも熱中症になりやすい環境といわれています。

誰でも条件がそろうと生命を脅かしてしまう熱中症の対策に、実はアンチエイジング、つまり老化を防ぐ要素が詰まっています。今回は正しく知ることで防げる予防医学についてご紹介します。

1. その水分補給、何が入っているか見てますか?

女性の体重あたりの体の水分量は約60%で、体内の水分は体温調整をしたり栄養素や老廃物の運搬などに関係しています。のどが渇く前にこまめに水分をとり、血流を良くして栄養素を運び、老廃物をためないようにすることで血管を若く保つことができます。

コーヒーやアルコールは利尿作用があるため、よく飲む人は脱水症になりやすいので気をつけましょう。また汗を多くかく時には、水分補給と一緒に塩分と糖分が適量含まれている経口補水液がおすすめです。

スポーツ飲料は塩分量が少なく糖分が多いため必要以上に飲みすぎないようにしてください。必要以上に塩分や糖分をとりすぎると血管を傷めたり、余分な糖と体のタンパク質がくっついて老化物質である「AGEs」が作られる「糖化」という現象が進みます。

この「AGEs」は、肌に蓄積するとシワやシミの原因となり、脳に蓄積すると認知症の原因になると言われています。また知っていただきたいこととして、乳製品飲料、ジュースやドレッシングなどさまざまな食品に含まれているブドウ糖果糖液糖などの人工的に作られた異性化糖は、砂糖よりも「糖化」リスクを何倍も上昇させ「AGEs」を多く作ってしまうので気をつけましょう。

自分で飲料水を作る場合は1ℓの水に1~2gの塩分と20~40gの砂糖やレモン汁を加えたものがおすすめです。

2. 現代の女性はタンパク質が足りていない!

朝食はできるだけとるようにしましょう。眠っている間には体内の水分が失われますが、朝食をとることで食事から水分と塩分がとれるため熱中症リスクを下げることができます。

次に食事で特に意識してほしいのがタンパク質です。タンパク質は肌や髪、筋肉、骨、内臓、血液など体をつくる素になります。不足すると艶のない肌や髪、貧血などの症状を引き起こしやすくなります。

タンパク質は動物性と植物性があり、動物性タンパク質は肉、魚、玉子や乳製品に多く含まれ、体内で作ることができない必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、筋肉作りに欠かせません。植物性タンパク質は大豆製品に多く含まれ、イソフラボンや食物繊維が多く脂肪燃焼効果もあります。

どちらのタンパク質も役割が違うためバランスよく毎食20gをとることが目安と言われています。納豆1パックだと約7g、玉子1個だと約6g、サラダチキン1個で約21gと、とるのはけっこう大変なので意識しないとタンパク質不足になってしまいます。

また、旬の野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富です。ビタミンB、Cは疲労回復効果があり熱中症予防になりますが失われやすいため、毎日積極的にとり入れましょう。

エネルギー源となる糖質は、未精製食品の玄米や全粒粉入りを選ぶと栄養バランスも良く、血糖値も上げにくいため、「糖化」を防ぐことができます。未来の身体のためにできることを次の食事からとり入れてみてください。

3. 紫外線を避けて早歩きで一石二鳥!

日差しがきつい時は日焼け止めを塗り、できるだけ日陰を歩くことは無意識にしていると思いますが、ここでプラスポイントとして、可能な限り日傘や帽子、サングラスなどで髪や眼を紫外線から守ることも大切です。

特に夏場の紫外線はきつく、細胞にダメージを与え、老化現象のひとつである細胞の「酸化」を促し、髪の傷みや、シミやシワを加速してしまいます。さらに毎日の生活の中で筋肉をしっかり動かしてください。何もしなければ年々、筋肉代謝は落ちて痩せにくい身体になります。

そこで簡単なのが早歩きです。普段よりも1.5倍速で歩きましょう。さらに毎日15分汗をかくことで熱を体内から放散しやすくなり熱中症になりにくい身体になります。

在宅勤務で外出の機会も減りましたが、15分は汗をかく簡単な有酸素運動や筋トレを動画サイトで始めてみるのもいいと思います。筋肉は水分をたっぷり貯めてくれるので脱水症になりにくいだけでなく、血管内の余分な糖分も取り込んでくれます。ぜひ筋肉を育ててみてください。

4. 寝ている間に老化物質をリセット!

睡眠不足は熱中症リスクも上げてしまうことは容易に想像がつくと思いますが、アンチエイジングの観点からも睡眠はとても大切です。人は寝ている間に成長ホルモンなどのアンチエイジングに必要なホルモンが活発に分泌されます。

特に寝入りからの3時間はしっかり質のいい睡眠をとることが大切です。成長ホルモンはダメージを受けた細胞の修復・再生・正常化を促すだけでなく、タンパク質や骨の合成や脂肪分解作用など多くの作用を持ち「若返りのホルモン」と言われているくらいです。

それ以外にも身体に蓄積した「AGEs」を代謝・排泄するのには最低6時間の睡眠が必要ともいわれています。

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特別なことをしなくても日々少しの工夫と知ることで防げる老化があることを知っていただけましたでしょうか? 自分の生活にあった方法でできることから取り組んでいただき、元気に夏をすごしてください。

竹中 奈織 
兵庫医科大学卒業後、病院勤務を経て産業医へ。シンガポール駐在経験のある3児のママ。妊娠糖尿病や妊娠高血圧になったことで予防医学を学ぶ。多くの人に今だからこそできる対策を伝えていきたい。

日本内科学会認定医
日本医師会認定産業医
日本抗加齢医学会専門医

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