いまわたしたちにできること~美容・健康・環境も~

あなたのワキ汗、大丈夫? 医師が教える「多汗症」と「汗っかき」の違い

ワキや手足の汗の量が尋常じゃない…。それはただの汗っかきではないかもしれません。多汗症という疾患の可能性もあるのです。もし思い当たるなら、セルフチェックを。病院へ行くべき基準やアドバイスも医師に聞きました。

ただの汗っかきではない? 多汗症という病気を知ろう

多汗症 汗っかき 手 脇 足の裏 医師 解説 直伝 教える

普段から、汗が人よりも多いことで悩んでいませんか?

科研製薬が2022年に実施した、多汗症という汗の量が多い病気のうち、特にワキ汗の多い患者を対象とした調査(※)によれば、ワキ汗が気になり始めた時期は、4割以上が「中高生」と回答し、最多となりました。

実際に、学生時代から汗の量が多いことに悩まされてきた人も多いようです。多くの場合「ただの汗っかき」ですませてしまいがちですが、近年は病気として扱われるようになっています。治療法も増えており、実際に診察を受ける人も増えているそうです。

そう話すのが、多汗症を多く診察してきた「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」の院長、藤本智子さんです。多汗症とはどんな病気なのでしょうか?

藤本さん 多汗症は、日常生活で困るほど汗の量が多くなる病気です。手のひらや顔・頭部・脇・足の裏といった限られた部位に汗をかく局所多汗症と、全身に汗をかく全身性多汗症があります。
また他の病気や障害が原因の場合は続発性多汗症、そうでない場合は原発性多汗症と呼びます。

ーー今回は、藤本さんに原発性局所多汗症のセルフチェック方法と対処法をうかがいました。

多汗症のセルフチェックをしてみよう

ーーもしカラダのどこかの部位に汗が多いと感じているなら、次の項目で確認してみましょう。

多汗症チェックリスト

  • 最初に症状が現れたのが25歳以下
  • 左右対称に汗をかく(両ワキ、両手、両足など)
  • 睡眠中は発汗がない
  • 1週間に1回以上、多汗で困るエピソードがある
  • 汗によって日常生活に支障をきたしている
  • 家族にも同じような状況がみられる

藤本さん 上記の6項目は、原発性局所多汗症の診断基準をもとにしたものです。過剰な汗が6か月以上認められ、上記の6項目のうち2つ以上に当てはまった人は、皮膚科などの医療機関の受診を検討してもいいと思います。

病院に行くべき? 行かなくても大丈夫?

ーーチェックリストに2つ以上あてはまるけれど、病院に行くべきか迷う人も多いでしょう。どのように判断すればいいでしょうか。

藤本さん 多汗症と汗っかきに明確な線引きはなく、症状の感じ方には個人差があります。汗が多くても困らない人もいれば、汗がそれほど多くないのに困っている人もいます。

もし汗のせいで日常生活に支障が出たり、汗を気にすることで本来のパフォーマンスが発揮できていないと感じたりする場合には、一度、医療機関の受診を検討したほうがいいと思います。

例えば手足の多汗症(掌蹠多汗症)であれば、握手ができない、PCやモバイル作業に支障がある、サンダルが履けないなどのお悩みがよくあります。

ワキの多汗症(腋窩多汗症)であれば、汗染みが目立つ色の洋服を着られない、ワキ染みが気になり腕を上げられない、つり革をつかめないなどのお悩みがよくあります。

多汗症の治療はどんなことをするの?

ーーもし多汗症と診断されたら、どんな治療を行うのでしょうか?

藤本さん 治療は汗が出る部位や重症度によって変わります。ワキの場合は保険適用となり、塗り薬、注射、手術などさまざまな選択肢があります。

ーーほかに気をつけることはありますか?

藤本さん 今回ご紹介したチェックリストの診断基準に合致しないような症状の場合、原発性多汗症でない可能性があります。

続発性多汗症であり、多汗を起こす原因疾患が隠れている可能性もあるため、その場合は疾患の原因検索を行う必要があります。例えば甲状腺機能亢進症や神経疾患などが考えられます。他の疾患の早期発見のためにも、汗に困っているのであれば、一度診察を受けるのをおすすめします。

ーーもし汗に悩んでいるなら、「ただの汗っかき」で終わらせず、自分の日常生活をよくするために診察を受けてみてはいかがでしょうか。他の疾患の早期発見をはじめとした将来の不安を拭い去るためにもおすすめです。

Information

藤本 智子さん

教えてくれた人… 藤本 智子(ふじもと・ともこ)さん
「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」院長 。多様な皮膚科疾患の診療、大学病院の発汗診療などでも長年中心的な役割を担ってきた多汗症治療のスペシャリスト。

※藤本智子ほか: 腋窩多汗症の患者意識調査:インターネットアンケート調査608人の結果報告

(C)Albina Gavrilovic/Getty Images