いまわたしたちにできること~美容・健康・環境も~

疲れや頭痛の原因は隠れ貧血かも! 医師直伝「貧血の意外な症状と対処法」

ここ数年のおこもり生活で「疲れ、だるさ」「肩こり」「頭痛」を感じていませんか? なんとなく不調を感じている人は、女性に多い傾向が。もしかしたら貧血が隠れているかも。原因と対処法を婦人科医が教えます。

なんとなく不調を感じている女性は8割超え

貧血 隠れ 疲労 だるさ 頭痛 月経痛

ツムラが2021年12月、全国の20代から40代の男女1,800人に行ったアンケート調査の結果では、日常生活の中で心身の調子がなんとなく悪い「なんとなく不調」を感じている人が全体の77.1%いました。女性に限定すると83.3%が感じている結果に。

ツムラ調査

「なんとなく不調」の具体的な症状をたずねたところ、女性のTOP3は、1位「疲れ・だるさ」62.5% 2位「肩こり」54.9% 3位「頭痛」53.5%でした。

多くの人が感じている不調。「なんとなくだから、たいしたことない」と流して放置してしまいがちですが、果たしてなぜこんなに不調を感じている人が多いのでしょうか?

「なんとなく不調」の原因と対策は? 婦人科医が解説

「霞が関ビル診療所」の婦人科医 丸山綾さんは、次のように解説しています。

丸山さん 「なんとなく不調」は、体温調節やカラダの基本的な調節を担う「自律神経の不調」であることが多いようです。

ーーでは、生活の中で、どのような対処を行えばいいでしょうか。

丸山さん まずは睡眠、食生活、運動習慣など生活習慣や生活リズムを整えましょう。生活リズムは寝る時間と起きる時間を一定にすること、そして運動習慣が大事です。

漢方医学では、気血水という三つの要素が滞っていることが、不調を引き起こすと考えます。この気血水を巡らせるのが運動です。散歩をしたり室内でスクワットしたり、自分の体力や好みに合わせて体を動かす習慣をつけることが、不調の予防にとても役に立ちます。

とはいえ、仕事や育児などで、自分だけではコントロールできないこともあります。そんなときは、医療機関に相談してください。今回の調査でも不調で病院を受診する女性はごくわずかでしたが、不調ぐらいでは病院に行かず、どうにも我慢できなくなってやっと病院に行くという回答が見られました。

その背景には、月経痛などの不調を病気と思っていないことや、我慢を美徳とする傾向などが考えられます。しかし、不調を我慢する必要はなく、適切な対処をすることで、不調のない日常を取り戻すことができます。

その疲れやすさと頭痛、「隠れ貧血」かも?

ーー丸山さんによれば、医療機関を受診することで、隠れた病気がないかを確認できるメリットもあるそうです。

丸山さん 20代~40代女性では、疲れやすさや頭痛の原因として、「隠れ貧血」が多く見られます。自己判断でのセルフケアで時間とお金を費やしてしまう方もいらっしゃいますが、適切な血液検査で確認できる場合が多く、実は全く別の原因が…というケースも残念ながらあります。

他に階段を上った後や運動時の息切れ、落ち込みやすさやうつ症状、肩こりの悪化などが、いわゆる貧血の症状と認識されておらず、わかりづらい症状です。

また一般的に貧血の症状と知られている冷え症や肌荒れ、爪割れ、脱毛や白髪などもみられます。

隠れ貧血が疑われたときの自分でできる対処法

ーーもし隠れ貧血が疑われたとき、自分でできることにはどのようなことがあるのでしょうか。

丸山さん 鉄分を多く含む食材を摂取しましょう。摂取のコツは、特に植物性食品に多い「非ヘム鉄」は動物性食品に多い「ヘム鉄」より鉄吸収量が低いので、ビタミンCを含む食品と一緒に摂取すること。そして鉄分摂取前後は鉄の吸収を阻害するタンニンを含む濃い緑茶、紅茶、コーヒーは避けることです。

また、鉄は鉄なべや鉄器などの使用、鉄のサプリメントの服用の方法もあります。ただし、過剰摂取はNGなので適切な摂取量は厳守しましょう。

ーー 一日の適切な摂取量はどのくらいなのでしょうか?

丸山さん 月経のある女性の必要摂取量は1日10.5mg。レバーなどの食事での鉄分の摂取は、その吸収量の低さから、かなり頑張ってもせいぜい1日10mg程度と言われています。それに対して鉄剤は1錠50mgのものもあります。ちなみに鉄のサプリメントは3mg程度のものが多いようです。

鉄剤を摂取していれば鉄分としては十分といえます。むしろ過剰は害になるので、医療機関でのフォローが使用の前提です。しかし、実際には赤血球やヘモグロビンの原料は鉄以外に亜鉛、ビタミンB12、葉酸なども必要なので、鉄剤を服用していてもバランスの良い食生活を心がけましょう。

病院で貧血がわかったらどんな治療を受ける?

ーー医療機関にかかり、血液検査をして貧血がわかれば、実際どのような治療が行われるのでしょうか。

丸山さん 貧血そのものに対する治療として、食生活指導、鉄剤・ビタミン剤の処方と同時に、貧血の原因検索と、原疾患(持病)があればそちらの治療をします。具体的には、胃潰瘍・十二指腸潰瘍をはじめとした消化器系疾患の有無、子宮筋腫・子宮内膜症(とくに子宮腺筋症)の有無と過多月経の評価、必要があれば血液疾患の検索です。

とくに月経のある女性はそれらの婦人科疾患が貧血の原因となっていることは多いので、必要があれば手術療法の他、低用量ピルなどで月経量のコントロールをすることは有効です。ピルにより月経量そのものが減り、貧血も改善されるので、別途貧血の治療をする必要がなくなることも多いです。

ーー「なんとなく不調」のように病気ではなさそうな頭痛やだるさであっても、症状があれば対症療法や漢方薬などで治療することができるようです。自己判断せず、心身の不調を感じたら、医療機関に気軽に相談しましょう。

Information

●教えてくれた人…丸山 綾(まるやま・あや)さん

丸山綾さん

「霞が関ビル診療所」婦人科医。1999年、日本大学医学部卒業。駿河台日本大学病院(現日本大学病院)、丸の内クリニックなどを経て、現職。専門は産婦人科一般、漢方診療。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医。

(C)fizkes/Getty Images