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PMSをもっと楽に! 産婦人科医が教える「婦人科を受診する目安と簡単セルフケア」

PMS(月経前症候群)で「仕事に行くのがつらいけれど休めない」と毎月悩んでいませんか? 我慢は禁物。婦人科を受診してつらさが改善した女性もいます。PMSの婦人科受診でどんな治療が受けられるのか、またセルフケア方法を産婦人科医に教わります。

「PMSで休みたくても休めない」女性は7割

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月経前に心身の不調が現れるPMSに悩む働く女性は多いものの、職場の理解が得られず、気軽に休むのはむずかしいのが現状のようです。

ツムラが2021年9月に行った「PMS(月経前症候群)実態調査」では、PMSで仕事や学校を「休んだ」経験があると回答した女性は、わずか17.6%で、52.1%と約半数が「本当は休みたかった」のに休めていない状況でした。

ツムラ調査「PMSで休んだ経験」

そして約7割が「PMSでも休むことはできない」(69.6%)、約8割が「PMSについて学校や職場の理解がない」(77.9%)と感じています。

また同調査では、PMSで婦人科を受診した女性は9.6%と1割に満たない状況。受診しない理由は「病院へ行くほどではない」「我慢できる」が多数でした。一方、受診したことのある人は「症状が楽になる」「悩みが軽くなった」と回答しており、62.3%が「定期的に受診したい」、88.3%が「今後も受診したい」という結果となりました。

PMSについて職場の理解が得られない場合の対処法

PMSで悩む働く女性たちの中には、PMSで出勤するのがつらくても、それを理由にして休むのはむずかしいようです。職場の理解が得られないという場合、どうすればいいでしょうか。「のぞみ女性クリニック」院長で産婦人科医の内山心美さんにうかがいました。

内山さん まだまだ、上司に相談しにくい環境があるのではないかと思います。欠勤が多くなるようなら、婦人科を受診しなさいと促していただくようになるとよいと思います。そのためには、社会全体にPMSの病態があることを理解していただくことが必要だと考えています。

現時点でできる対策としては、PMSの症状は女性特有の月経周期が原因であることを上司や周囲に伝えること。その代わり、自身もしっかり診察を受け、前向きに治療をしていただくことと、治療を受けていることも上司や周囲に伝えることが、理解にもつながるのではないでしょうか。

PMSで婦人科を受診する目安は?

ーとはいえ、調査結果からもわかるように、婦人科受診は少々ハードルが高いですよね。では、具体的にどのようなPMSの症状があったら受診すべきなのでしょうか。目安を内山さんにうかがいました。

内山さん ご自身がその症状によって生活の質(QOL)の低下を感じたら、相談されるとよいと思います。薬物療法には副作用などデメリットもあるので、メリットをより強く求める状況があるとよいのではないでしょうか。

しかしながら、ご本人が「このくらいなら、受診するまでもない」と思う程度でも、自覚する症状があれば、漢方薬を処方することが可能なケースは多いので、迷われたらぜひ相談されることをおすすめします。

PMSには精神症状もありますが、イライラ、攻撃傾向が強くなると、家族や職場の人間関係にも摩擦が生じ、退職や離別につながる恐れもあります。またうつ症状が強くなると「死にたい」と考えるようになることもあります。このような場合は早めに相談してください。

PMSで婦人科を受診するとどんな治療を受けるの?

ーPMSの症状から婦人科を受診すると、どのようなメリットがありますか。

内山さん 低用量ピルを処方した場合、比較的早い段階で効果が期待できますし、漢方薬だけでも十分改善することもしばしばあります。

ー実際、どんな治療を受けられるのでしょうか。

内山さん 生活指導では、症状を記録してもらい、月経周期との関係性を確認し、疾患への理解を深めます。また規則正しい生活、運動も指導します。そして家族への理解を求め、自分だけで問題を抱えず、つらいということを伝えサポートしてもらうよう促します。

薬物療法では、鎮痛剤、精神安定剤などのほか、漢方薬、経口避妊薬(OC)および低用量エストロゲン、プロゲスチン配合薬(LEP)、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬などを処方します。

ー患者それぞれの背景によって治療法は異なりますか。

内山さん 独身、または妊娠の希望がないケースでは、PMSによる不調はおもに排卵周期によるホルモン変動と排卵後の黄体ホルモンが原因なので、経口避妊薬(OC)および低用量エストロゲンやプロゲスチン配合薬(LEP)を勧めることが多いです。

一方、ピルに対し副作用のリスクが高い、もしくは抵抗や心配がある方、今後妊娠を希望される場合には漢方薬や抗うつ薬(SSRI)を選択します。うつ症状がより強い「PMDD(月経前不快気分障害)」では抗うつ剤、ピルを選択するか精神科の受診を勧めます。

自分で何とかしたい人に! PMSの症状のセルフケア術

ー婦人科を受診するまでもない軽度の場合には、セルフケア術を身につけたいものです。自分でできる方法を内山さんにアドバイスいただきました。

睡眠と食事を見直す

内山さん 睡眠と食事を見直してみましょう。理想の睡眠時間は人それぞれ異なりますので、心地よく起きられて活動的になれる睡眠時間を確保して、しっかりと睡眠をとりましょう。食事は栄養が偏らずバランスよくとることが大切です。

趣味や運動でストレスを発散する

内山さん ストレスを趣味に没頭して発散する、運動する、ヨガやマインドフルネス、瞑想をするのもおすすめです。カラオケやスポーツ観戦など、大声を出せるような状況もいいですね。ただしコロナ禍なので十分、感染対策を考慮してください。
オンラインなどを駆使して極力、人と話すようにすることもストレス解消につながります。

自分だけで我慢しない。不調や悩みを共有してもらう

内山さん まず自身がPMSの病態についてよく理解すること。低調なときもあり、それが悪いわけではないと受け入れ、低調なりに無難にこなすという術を得ることが大切ではないでしょうか。

ただ、PMSの場合は病態を周囲の人に理解してもらえないことが多いです。家族、職場など可能なかぎり、PMSにより不安定な状況にあることを理解してもらい、協力してもらうことが重要です。

ーPMSに悩んでいるなら、ぜひ今回のアドバイスをヒントにして、対策を立ててみてくださいね。婦人科を受診するか迷っているなら、一度相談してみるのも良さそうです。

Information

内山心美さん

教えてくれた人
内山 心美さん のぞみ女性クリニック院長 産婦人科医。女性に関するさまざまな病気、トラブルを最小限にして笑顔で過ごしてほしいとの願いから2020年9月に産婦人科・漢方内科「のぞみ女性クリニック」を開業。

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