いまわたしたちにできること~美容・健康・環境も~

“いつでもどこでも眠れる”は危険! 「睡眠負債」が肌と心に及ぼすデメリット

「私はいつでもどこでも眠れる」という方は、それがいわば特技のようにお話されるケースがありますが、実は、睡眠負債がある状態ということをご存知でしょうか? 良質な眠りが得られていれば、いつでもどこでも眠れないはずなのです。今回は、いつでもどこでも眠れる状態のときのデメリットを、眠りとお風呂の専門家・公認心理師、SleepLIVE(株)代表の小林麻利子がお伝えします。

眠気には日内リズムがある

睡眠 睡眠不足 寝不足 睡眠負債 寝だめ デメリット リスク

まず、眠気について考えてみましょう。

眠気の強さを測定したテクニオンイスラエル工科大学の実験では、眠気には日内変動があり、22時〜翌朝8時に最も強い眠気がきており、眠気のピークは深夜4時。日中は14時頃に眠気が強いという結果が得られていることから、1日に2つの時間帯に人は眠くなるようになっています。

実際に、深部体温が高い時間帯というのは覚醒度が高い時間帯なので、本来は眠くなったり、ちょっと横になったくらいで眠りには入らないはず。なのに、この2つの時間帯以外にも眠くなってしまうというのはなぜでしょうか?

いつでもどこでも眠れる、は睡眠負債が蓄積している状態かも

いつも眠かったり、横になったり目を瞑るだけで眠りに入ってしまうのは、そもそも睡眠負債が蓄積している状態かもしれません。

睡眠負債とは、スタンフォード大学のWilliam C. Dement 教授によって提唱された言葉で、毎日知らず知らずに睡眠不足が蓄積していった、いわば睡眠の借金のこと。これは、休日に長く寝たくらいでは返済できないことがわかっています。

睡眠負債がある状態では、先ほどの2つの時間帯だけでなく、深部体温が高い夕方や夕飯後などでも眠気がでてしまい、いつでもどこでも眠れる状態になってしまいます。

平日と休日の起床時刻の2時間以上の差

睡眠 睡眠不足 寝不足 睡眠負債 寝だめ デメリット リスク

平日と休日の起床時刻が大きくずれている方は、ソーシャルジェットラグ、いわゆる時差ぼけ状態になります。特に、2時間以上ずれている場合は、休み明けに影響が出ることがわかっており、ブルーマンデーと言われるように、月曜日の朝に会社や学校に行きたくない…という状態になりかねません。

本来なら深部体温が上昇して自然に朝目が覚めるところ、ソーシャルジェットラグがあれば、深部体温がうまく上昇できずに、寝起きが悪くなります。そうすると朝ごはんの時間に食欲がなく、食事を取らないまま出勤。体温もうまく上昇しないため、午前中は仕事や勉強に力が入りません。太陽を浴びる機会も後ろにずれたり、運動する気力もなく深部体温が日中にうまく上昇しなければ、就寝時に深部体温がきちんと低下されず、眠りの質が格段に低下してしまいます。

こういった体内リズムが乱れている状態では、眠気やだるさが常に付き纏っているため、いつでもどこでも眠れる状態になってしまうのです。

体への影響

睡眠不足状態が続くと、うつ病やガン、認知症のリスクが上昇することが、さまざまな調査で明らかになっています。また、2003年のペンシルバニア大学の研究によれば、6時間睡眠を1週間ほど続けた場合、1晩徹夜したグループと同程度の脳の働きであったという報告もあります。

1晩でも徹夜すると、判断力が鈍ったり、食欲を抑えられなかったり、ちょっとしたことでイライラすることもありますよね。自分は、問題なく仕事や人付き合いをしていると思っていても、実はさまざまな事柄のパフォーマンスが低下していることもあり得るのです。

日本人の約4割は睡眠6時間未満である報告があります。6時間眠れば問題なし! 自分は問題ない! とお考えの方も多いかもしれませんが、今、メンタルや体、美容や健康にほんの少しでも課題を感じるならば、睡眠負債がある状態かもしれません。

睡眠負債を返済したら、こんなにいいことが!!

睡眠 睡眠不足 寝不足 睡眠負債 寝だめ デメリット リスク

負債を返済することで、今まで以上に仕事の成果がでる可能性もあります。午前中はいつもなんとなく仕事に対するエンジンが掛からず、夕方頃からやる気が出る方は、朝からすこぶる快調! 大きな商談やプレゼンも、卒なくこなせるかもしれません。

また、睡眠と美容は密接に関係しています。眠りのリズムが整い、深い眠りが得られることで、成長ホルモンがきちんと分泌し、肌や髪の状態を良くしてくれます。食欲もコントロールできるようになるので、食べ過ぎや食欲不振などになりにくくなるでしょう。

いかがでしたでしょうか? デメリットを知ることで、対策を取りやすくなります。

次回は、「いつでもどこでも眠れる」状態を克服するための方法をお伝えします。

睡眠 不眠 熟睡 快眠 寝起き 起床 スッキリ

眠りとお風呂の専門家
小林麻利子さん

同志社大学卒業、京都市出身。SleepLIVE株式会社代表取締役社長。生活習慣改善サロンFlura主催。公認心理師。科学的根拠のあるデータや研究を元に、睡眠と入浴を中心とした生活習慣を見直すことで、自律神経を改善していく指導が人気。約2,000名以上もの悩みを解決し、テレビや雑誌など、多くのメディアで活躍中。不規則な生活になりがちな、芸能人やモデル、アナウンサーへも指導。

企業向けには、健康経営や睡眠関連事業支援などを行う。著書に『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)『不美人習慣を3日で整える熟睡の練習帳』(G.B.)など多数。プライベートは、3歳児と0歳児の母。

(C)Westend61/Getty Images
(C)Cavan Images/Getty Images
(C)Ridofranz/Getty Images