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いつかは止めるべき?【女医が解説】「低用量ピル」に関するQ&A

最近ではオンライン診療の普及もあり、低用量ピルを服用する女性も増えています。「使ってみたいけど、ちょっと不安かも」「何歳まで服薬するか迷っている」という人も多いのではないでしょうか。今回は「anan Beauty+」に寄せられた質問をもとに、産婦人科専門医の筆者が、低用量ピルに関する質問にお答えしていきます。

Q .低用量ピルのメリット・デメリットは?(34歳・会社員)

Q .低用量ピルのメリット・デメリットは?

低用量ピルは、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の2種類の女性ホルモンが配合された薬です。

■メリット
低用量ピルは、排卵を抑制するため避妊効果があるとされます。また、月経時の出血は主に子宮内膜が剥がれることで生じますが、低用量ピルは子宮内膜の増殖を抑制するため、月経時の出血量を減らして、月経痛を改善する効果が期待できます。この他、ホルモンバランスの変化が抑えられることから、PMS(月経前症候群)の症状を改善したり、ニキビをできにくくするといったことも期待できるでしょう

そのため、低用量ピルは避妊をしたい人、月経痛やPMS(月経前症候群)の症状が辛い人、経血量が多くて困っている人、ニキビが気になる人などにおすすめです。

■デメリット
女性ホルモンが配合されていることから、服用を始めたばかりの初期には吐き気や胸の張り、むくみや不正出血などの副作用が出る場合があります。また、非常にリスクが高いわけではありませんが、服用することで血栓症のリスクが高まる可能性もあり、喫煙者や40代以降の女性は使いにくいという点があります。

この他、「1日1回の服用」にはメリットとデメリットの両方があると言えます。低用量ピルは手軽に服用できる一方で、“毎日決まった時間に服用する必要がある”ため、飲み忘れたり時間がずれたりすると、不正出血が起こりやすくなったり、期待した効果が低下したりすることがあります。

Q .低用量ピルをずっと飲み続けても大丈夫?(36歳・専門職)

低用量ピルは、リスクが高くない人に関しては、閉経もしくは50歳を迎えるまでは服用しても問題ないとされています。しかしながら、年齢とともに血栓症のリスクが高くなることが知られており、40歳以降の人は飲み続けるかどうかを慎重に判断する必要があります。

具体的には肥満(BMI30以上)、高血圧、脂質異常症、耐糖能低下、血栓症の家族歴がある人などは、リスクについてもしっかりと検討するべきでしょう。また、習慣的に喫煙している人は、喫煙が血栓症のリスクになる可能性があると考えられます。35歳以上も低用量ピルを続けたい場合には、禁煙を視野に入れたほうがいいでしょう。

月経痛やPMS(月経困難症)の改善、避妊といった目的の治療としては、低用量ピル以外の選択肢もあります。具体的には、黄体ホルモンのみの内服薬や子宮内避妊システム(ミレーナ)、漢方薬などといった方法です。自分にとってどの治療法がベストなのか、婦人科で相談してみてくださいね。

Q .年齢を重ねたら低用量ピルをやめたほうがいいでしょうか? 月経をコントロールし続ける方法はありますか?(35歳・専門職)

いつかは止めるべき? 【女医が解説】低用量ピルに関するQ&A

低用量ピルを飲んでいると旅行などのスケジュール管理が楽になるため、「年齢を重ねても低用量ピルを飲み続けたい」という人もいらっしゃいます。

先ほどお話したように、低用量ピルの服用は一人ひとりのリスクに合わせた判断が必要になります。特にリスクがない人の場合は、閉経もしくは50歳を迎えるまで飲んでも問題ないといわれていますが、年齢とともに血栓症リスクは上昇します。

40歳以上の人や何らかの血栓症リスクがある人は、継続的に低用量ピルを飲み続けるのではなく、旅行などのタイミングにかぶらないように、月経を移動したいときにだけ使用する方法がおすすめです。

黄体ホルモンのみの内服薬や子宮内避妊システム(ミレーナ)なども、月経痛の改善や月経の量を減らす効果が期待できます。これらを選択肢に加えてみるのもいいですね。

Q.低用量ピルの副作用でうつになる人はいますか?(36歳・会社員)

低用量ピルの副作用として「低用量ピルを使用していない人と比較して明らかにうつになりやすい」という研究データは、今のところ報告されていません。

しかしながら、なかには一時的にうつ症状が出る人もいらっしゃるようです。低用量ピルには月経前のメンタル不調を抑えてくれる作用が期待できるのですが、逆に、うつやイライラの症状が強く出しまうケースも。

これは、ホルモンバランスの変化で起こる一時的な症状の場合も考えられます。低用量ピルの種類を変更してみるか、しばらく飲み続けて体が慣れてくることで症状が落ち着く可能性もあるでしょう。

上手に活用すれば女性の強い味方に

上手に活用すれば女性の強い味方に

ここまで見てきたように、低用量ピルにはメリットとデメリットがあります。しっかりとリスクを考慮した上で低用量ピルの服用を検討してみてくださいね。上手に使用すれば、女性の心強い味方になってくれるはずですよ。

©︎Tat'âna Maramygina/EyeEm/PIXTA(ピクスタ)
©︎SeventyFour/zak/PIXTA(ピクスタ)

ママ女医ちえこ (産婦人科医)

ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは3人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の身体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は13万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
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