いまわたしたちにできること~美容・健康・環境も~

生理休暇を言いにくい…【産婦人科医監修】仕事中に「月経痛がツラい」ときの対処法

約1か月に1回の周期でやってくる月経。人によっては月経痛がひどかったり、イライラやだるさなどの月経前症候群(PMS)で仕事に集中できなかったりと、辛い思いをしている人も多いでしょう。今回は産婦人科専門医の筆者が、仕事がある日に月経が重いときの対処法などをご紹介します。

「生理休暇」は労働基準法で認められた権利

生理休暇は労働基準法で認められた権利

日々外来で診察をしていても、「月経痛が辛い」「PMS症状が辛い」とお悩みの人はよくいらっしゃいます。「月経痛がひどくて動くのが辛いけど、会社を休むわけにはいかないし…」と無理をして出勤している人も少なくありません。

このような症状がある場合、会社を休みたいと思ってもなかなか言い出せないという女性は多いものです。しかしながら、月経痛で辛いという場合に休むのは、働く女性の権利でもあるんです。

労働基準法(第68条)では、以下のように「生理休暇」が認められています(※1)。

労働基準法(第68条)

「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させることはできません。」

生理休暇中を有給にするか無給にするかについては、会社が独自で定められることになっています(※2)が、生理休暇は女性労働者であれば誰でも請求できるもの。

しかしながら、令和2年に行われた厚生労働省の調査によると、生理休暇の取得率は1%を切っているのが現状だそう(※3)。

女性の社会進出が進む一方で、労働環境における女性特有の健康問題も数多く存在します。そのひとつが月経にまつわる問題なのですが、人によっては周囲の人になかなか言い出しにくい側面もあるようです。

月経痛が辛いときは「休みたい」と意思表示してもいい

出勤できないほど月経痛が辛い場合、まずは相談しやすい先輩や上司に休みたい旨を伝えてみましょう。生理休暇は1日単位で取得しなくても、半日または時間単位で取得可能です(※1)。

たとえば「出勤したけれど、やっぱり勤務を継続するのが難しい」という場合は、午後から休むこともできます。一度出勤したからといって、定時まで頑張る必要はありません。どうしても辛いときは、無理をせず先輩や上司に伝えるようにしましょう。

辛い月経痛、自分でできる対処法は?

辛い月経痛、自分でできる対処法は?

月経痛が辛い場合は、ギリギリまで我慢するのではなく、より快適に月経期間を過ごせる工夫をしてみましょう。

あまりにも痛みが強すぎると、月経期間中は痛みのケアについて考える余裕がないかもしれません。月経痛を軽減するためには、月経期間以外の余裕があるタイミングで対処法をチェックしておくのが安心です。

1.お腹を温める

自分で簡単にできる月経痛の対処法は、お腹をしっかりと温めることです。温める際は、内側と外側の両方からアプローチするといいでしょう。

内側から温めるためには、温め作用が期待できるショウガやニンニクなどを摂取する方法があります。またお風呂に入る際は、しっかりと浴槽に浸かって外側からお腹を温めるのがおすすめです。

2.適度に運動する

月経期間中は布団にくるまって寝ていたいと思うかもしれませんが、適度に動くことで月経痛の改善につながることも。余裕があるときには、ウインドウショッピングに出かけてみたり、近くの公園をお散歩してみたりするのがおすすめです。

外に出る元気がない場合は、自宅でストレッチするのもいいですね。骨盤まわりの筋肉をストレッチすると血流の改善につながり、月経痛を和らげる効果が期待できます。

3.鎮痛薬を飲む、サプリメントを摂取する

市販の鎮痛薬を効果的に使用して、月経痛を緩和する方法があります。月経の出血が起こるのは、プロスタグランジンという物質が原因。鎮痛薬は、このプロスタグランジンをブロックして、痛みを緩和してくれます。

よく効かせるためのポイントは、痛くなりだす前から定期的に服用しておくことです。本格的に痛くなったあとから飲んでも問題はありませんが、早めに服用しておくほうが効果的に痛みをブロックできるといわれています。

サプリメントでは、マグネシウムやビタミンB6を摂取すると、月経痛やPMSが改善するとされています。また、ビタミンDやカルシウムも症状を和らげる可能性が報告されているので、マルチビタミン・ミネラルとしてまんべんなく摂取するのもいいですね。また、オメガ3脂肪酸にも炎症を抑える作用があるといわれています。

辛い場合は専門医に相談してみよう

辛い場合は専門医に相談してみよう

仕事をするのが難しいほど痛みが辛い場合は、ぜひ婦人科に立ち寄っていただきたいです。生活に支障をきたすほどの痛みを感じる場合には、子宮や卵巣に異常があるということも少なくありません。婦人科で異常がないかどうかチェックしておくのがよいでしょう。

また、漢方薬を使う方法や、低用量ピルで出血量を減らすなどの治療によって、月経痛やPMSの症状を緩和できる可能性があります。月経痛で悩んでいる方は、一度相談してみてください。

婦人科受診はなかなかハードルが高いという人は、オンライン診療を利用したピル処方などを検討してもいいかもしれません。ひとりで悩まずに、お気軽にご相談くださいね。

【参考】
※1 厚生労働省.労働基準法のあらまし(生理休暇)
※2 働く女性の心とからだの応援サイト
※3 厚生労働省.令和2年度雇用均等基本調査

©goffkein.pro/Kaspars Grinvalds/Iryna Rahalskaya/shutterstock

ママ女医ちえこ

ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは3人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の身体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は13万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
YouTube:https://www.youtube.com/c/mama女医ちえこ
Twitter : https://twitter.com/mamajoy_chieko