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経血がドッと出て冷や汗をかいた…【産婦人科医が解説】月経中の“あるある”なお悩みと対策法

月経前後にやってくる腹痛や頭痛、気分の落ち込みやイライラ、食べすぎといった体調の変化。それってホルモンが原因かもしれません。ホルモンの波と上手に付き合い、月経をラクに乗り切るためのポイントを産婦人科専門医が解説します。

月経前後でこんなお悩み、ありませんか?

経血がドッと出て冷や汗をかいた…【産婦人科医が解説】月経中の“あるある”なお悩みと対策法

・腹痛や頭痛がとにかくつらい
・気分が落ち込む、またはイライラする
・つい食べすぎてしまう
・眠すぎて気づくとずっと寝ている
・デリケートゾーンに不快感がある
・においが気になる
・漏れてしまったのではないかと不安になる

月経は妊娠に向けて成熟した子宮内膜が剥がれ落ち、排出されるものです。約1か月に1回の周期でやってくる月経ですが、人によっては痛みが強かったり体調がすぐれなかったりと、普段通りの生活ができないと感じる方も多くいらっしゃいます。

そこで今回は、月経中の“あるある”なお悩みとその対策方法をご紹介します。

1.腹痛や頭痛がとにかくつらい

月経中で最も多い悩みは、腹痛や腰痛、頭痛といった痛みです。月経のときに子宮内膜が剥がれ落ちるのですが、同時に痛みを引き起こすプロスタグランジンという物質も放出されます。そのため、痛みが起こるとされています。また、月経中には血液の巡りが悪くなる、漢方医学でいう「瘀血(おけつ)」という状態になることがあり、これも月経痛の原因といわれています。

対策としては、鎮痛薬を上手に活用することと、血液の巡りを良くするのがおすすめです。鎮痛薬は、痛みのピークに飲むよりも、痛みが強くなる前に飲み始めた方が良いとされています。例えば「私は月経2日目がつらい」ということがわかっているのであれば、痛くなる前の朝、昼、晩に内服するのがおすすめです。鎮痛薬の過剰服用を心配する方もいらっしゃいますが、短期間であればトラブルを起こすことも少ないでしょう。

体を温めて痛みを和らげる方法としては、内側と外側からのアプローチがおすすめです。温め作用があるといわれている生姜やニンニク、温かいスープなどを食事に取り入れつつ、入浴時にしっかり温まったり、カイロなどを利用してお腹を温めるのも良いでしょう。また、無理のない範囲でウォーキングなどの軽い運動をして血流を促すのもひとつの手です。

2.気分にムラが出る

月経前には「月経前症候群(PMS)」といって、気分の落ち込みやイライラなど、気分のムラを感じる方もいらっしゃいますが、月経が始まってからも症状が続く方もいます。これは、月経周期によるホルモンの変動が原因であると考えられています。

対策としては、心と体に対してプラスに働く栄養素をしっかりと補充するのがおすすめです。具体的にはビタミンB群、イワシやサバ、サケなどの青魚、イクラやタラコなどの魚卵に含まれるオメガ3脂肪酸、カルシウムやマグネシウムなどがメンタルの安定に大切な栄養素として知られています。

これらの栄養素は気分のムラだけではなく、月経痛の改善にもつながる可能性があります。食事に取り入れるのが難しい場合は、サプリメントを取り入れてみるのも良いでしょう。その他、カモミールやローズマリーといった気分をリラックスさせてくれるハーブを、入浴後や睡眠前のリラックスタイムに楽しむのもおすすめです。

3.つい食べすぎてしまう

ついつい食べすぎてしまう

月経中には、食欲が増して食べすぎてしまうという方もいらっしゃいます。特に、甘いものが欲しくなるという方が多いようです。

対策としては、ある程度の食べすぎは許容して「せっかく食べるのならいつものコンビニスイーツではなくパティスリーの高級スイーツを味わって食べる」など、楽しみながら食べすぎない工夫をするのがおすすめです。

月経中は他の様々な症状からもストレスを感じやすい時期なので、ある程度は自分を甘やかしてあげることも大切。ただし、砂糖には中毒性があるといわれており、もっと甘いものが食べたくなってしまうという方もいらっしゃいます。血糖値の乱高下はメンタルの不調につながることもあるので、甘いものが欲しい場合は、血糖値が急激に上がりにくいとされるてんさい糖やハチミツを摂るのもおすすめです。

4.眠気が増してボーっとする、寝付きが悪くなる

月経前や月経中に眠気が強くなったり寝つきが悪くなったりと、睡眠に関する悩みを抱える方もいらっしゃいます。これはホルモンの変動によって起こるため、ある程度は仕方がないともいえるでしょう。

対策としては、睡眠の質を上げることが挙げられます。就寝1時間前にはスマホなどのブルーライトを避ける、2時間前までに入浴は済ませておく、部屋は真っ暗な状態にして心地よいと感じる寝具を用意する、などを意識してみてください。

また、日中にある程度運動をするのも良いでしょう。それでも眠いと感じるときは5〜10分程度を目安に短時間の昼寝をするのもひとつの方法。その他、ごはんやパン、お菓子など糖質の摂りすぎは、食後に眠気を誘発しやすいといわれています。糖質の摂りすぎを避けるのも、眠気を抑えるのにおすすめですよ。

5.デリケートゾーンが不快になる、においが気になる

デリケートゾーンが不快になる

月経中は常に生理用品が必要になります。日本では紙製のナプキンを使用している方が多いため、ナプキンかぶれやできものといったデリケートゾーンのトラブルが起こりやすくなっています。

また、月経時の出血である経血には栄養が豊富に含まれるため、雑菌が繁殖しやすい状態になります。特に、同じナプキンを長時間付けっぱなしにすると、ニオイやムレの原因になってしまうことも。

対策としては、ムレや雑菌の繁殖を防ぐことが大切です。経血量が多いときにはナプキンをこまめに取り替え、常に清潔な状態を保ってムレないようにしましょう。また、月経カップやタンポン、吸水ショーツなどを上手に取り入れるのもおすすめです。

アンダーヘアに付着した経血もにおいの原因になりやすいので、ビデなどを上手に利用して、アンダーヘアに絡みついた経血を除去するとより匂いが緩和されるでしょう。

6.漏れてしまっていないか不安になる

デスクワークなどで長時間座りっぱなしの状態が続いた後に立ち上がると、一気に経血が出て「漏れてしまったのではないか」、「服が汚れてしまったのではないか」と冷や汗をかいた経験がある方も多いのではないでしょうか。長時間の会議や忙しくてトイレに行けないときなど、どうしても座りっぱなしの状態が続いてしまうことはありますよね。

そんなときはタンポンと吸水ショーツ、月経カップとナプキンなど、生理用品を組み合わせて使うのがおすすめです。体につけるタイプの生理用品をプラスで使うと安心感が増しますね。

自分に合った対策でつらい月経を乗り切ろう

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今回は月経中のあるあるとその対策法についてご紹介しました。現代女性は初経を迎えてから閉経するまで、450〜500回も月経を経験するといわれています。少しでも月経を快適に過ごせる方法を見つけておきたいですね。

月経時のトラブルで日常生活に支障をきたす場合は、一度婦人科を受診してみることをおすすめします。子宮や卵巣に異常がないかどうかをチェックしたり、症状によってはピルや漢方薬などを含めた治療法などもあります。ぜひ気軽に相談してみてくださいね。

©︎topic_kong/AK/kei.channel/Ushico/PIXTA(ピクスタ)

ママ女医ちえこ

ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは3人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の身体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は13万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
YouTube:https://www.youtube.com/c/mama女医ちえこ