月経痛の緩和やPMS症状の改善にも! ピルの効果や副作用を【産婦人科医】が解説
「ピル」と聞くと、避妊薬としての役目や、副作用が怖いというイメージがある方も多いかもしれません。最近では、PMSやPMDDなどの月経に関わるお悩みの緩和のためにも服用されています。しかしなかには、PMSやPMDDで悩んでいるけれど、ピルについてわからないことが多く、服用するのは不安という方もいるでしょう。そこで今回はPMSの解説からピルの種類や取り入れ方、副作用などをご紹介します。
1.PMS(月経前症候群)の症状
2.PMS(月経前症候群)とは?
3.月経ともっとラクに付き合えるかも! ピルの取り入れ方
4.ピルにまつわるあれこれQ&A
5.ピルも味方につけて、月経と向き合おう
1.PMS(月経前症候群)の症状
女性約100人に聞いたPMSの症状や対策について
anan Beauty+ clubのメンバーにPMS(月経前症候群)の症状と期間、その対策についてリサーチしました。
※anan Beauty+ club…美容・健康・エコ好きな女性たち約100名が集まるanan Beauty+の読者組織。
PMSは月経のある人全員に生じるものではありません。まずは、PMSの有無について聞いてみました。
PMS(月経前症候群)はありますか?
なんと9割以上の方が、何らかのPMS症状を感じているようです!
具体的な症状は…
当てはまるPMSの症状を教えてください
症状は多岐にわたっています。また、その他は…
「胸の張り」(33歳・専門職)
「体がむくむ」(30歳・その他)
というものがありました。
具体的な症状と期間を聞いてみました。
「生理1週間前くらいから肌荒れがひどく、ニキビができる。そして、生理3日前くらいから眠さ、頭痛、イライラ、落ち込み、怠さ、食べすぎが発動。特に怠さが酷く、在宅ワークだと仕事がはかどりません…これらの症状に生理2日目くらいまで悩まされますが、生理後半になると元気になりはじめ、気持ちがキラキラします」(29歳・会社員)
「生理が始まる2日前くらいからイライラして肌が荒れ、食欲が増します。また、ちょっとした動作で立ちくらみを起こすことも。生理前日~生理2日目くらいまでは、異常な眠気があり、起きている間はずっと眠たい状態です。座って事務的な仕事をしていると、眠気に負けてしまい、気づいたらハッと目が覚めることもあります」(32歳・会社員)
「頭痛や腹痛で動けなくなることが多々ある。大体生理2日前くらいから生理3日目まで続く」(33歳・会社員)
「生理1週間前くらいから、腰痛、イライラ、食欲増進、気分の落ち込み、眠気、怠さ等が日替わりに生理3日目くらいまで続く」(38歳・自営業)
多くの方が月経開始後もその症状に悩まされているようです。では、これらの症状に対して何か対策はしているのでしょうか?
PMSの症状に対して、何か対策をしていますか?
その対策とはどのようなものでしょうか?
「GABAのサプリを飲んでいる」(31歳・主婦)
「デザートやお酒など、プチ贅沢をして自分を甘やかす」(39歳・会社員)
「婦人科を受診して、漢方を服用し以前より症状は和らいでいる気がする。また、体を温めたほうがいいと言われ、生理前から冷えには気をつけるようにしている」(38歳・専門職)
「PMSの症状は、メンタルの不調と食欲増加。食欲を抑えるとイライラが止まらなくなるので、その時期だけは何でも好きに食べて良いことにしています。イライラする頻度は少なくなったかなと思います」(29歳・会社員)
「命の母ホワイトを飲む。メンタルを落ち着かせるアロマオイルをかぐ。ハーブティーを飲んでから寝る。かなりメンタルが落ち込むので、相当対策をしているほうかなと思っています」(25歳・会社員)
病院へ行く、サプリメントを飲む、薬を飲む、自分を甘やかす、とその対策は人それぞれ。
また、対策をしていない方の理由を聞いてみました。
「その時によって出る症状が変わるから我慢して過ごす」(31歳・会社員)
「面倒。耐えようと思えば、耐えられるので」(33歳・会社員)
「時が解決してくれるから」(24歳・会社員)
「病院に行くか検討したことがあるが、このような症状を何といえばよいのかわからず、対策できていない」(26歳・会社員)
PMSのほとんどが、月経がきてしばらくすると症状が消失していきます。終わりが見えているからこそ、“数日我慢すれば…”と思ってしまうのもわかります。
文・小田原みみ
2021年10月14日配信
2.PMS(月経前症候群)とは?
だいぶ浸透してきた“PMS=月経前症候群”という言葉。改めておさらいすると、PMSとは、月経前、3~10日の間続く、精神的・身体的な不調のことで、月経が始まるとやわらぐのが特徴。そのメカニズムは、まだすべて解明されてはいないが、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの変動で起こると考えられています。
現れる症状は人によって様々。イライラして周囲に八つ当たりしたり、何でもないことで涙が出てきたり…。食欲ひとつとっても、増加する人もいれば、反対に減退する人もいます。
日本産科婦人科学会専門医で、聖路加国際病院女性総合診療部に勤務する岡田有香先生に、PMSについて詳しくうかがいました。
「症状が幅広く定義しづらいため、自分が気づいていないだけで、実はPMSということも、十分あり得ます。日本では、生活支障をきたすほど強い症状を抱える女性は約5%といわれていますが、月経のある女性の約7割が月経前に何かしらの症状を感じています。不調があるがPMSに当てはまるかどうかわからないという方は、症状がいつ起こるのか、ご自身の月経周期と照らし合わせてみるといいですね。立て続けに3回、生理前に起こっているなら、PMSの可能性が大。諦めてやり過ごさず、婦人科医に相談を。生理痛と同じで、我慢しなくていいんです」
PMSと診断された場合の治療法は大きく2つあります。
「女性ホルモンの大きな変動により起きるといわれているので、低用量ピルで排卵を止めるのが一つ。もう一つは漢方で、ピルと併用する場合もあります。薬の服用により、グッとラクに過ごせるようになりますよ」。
Q. PMSの主な症状って?
A. 特に多く見られるのは、イライラと乳房の張り。
以下に挙げた症状だけでも、現れ方は様々だとわかるPMS。これ以外にも、肌荒れやニキビ、便秘といった身体的症状や、落ち着かなくなる、周囲に八つ当たりしてしまうなどの精神的症状もあり、その数は200以上ともいわれています。ホルモンの分泌を司る脳への刺激を減らすために、ストレス対策を心がけたいですね。
●精神神経症状
情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害●自律神経症状
のぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感●身体的症状
腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張り
Q. PMSとPMDDの違いとは?
A. PMSの精神的症状が重症なものがPMDD。
PMDDとは、PMSの中でも精神的な不調が深刻で、日常生活を送れないほどの状態になることを指します。月経前不快気分障害とも呼ばれ、暴力的になったり、自己喪失感に襲われたりと感情が著しく不安定になることも。仕事が手につかず、人間関係に支障をきたすなど、日常生活への影響も大きいため、婦人科だけのアプローチでは難しいケースもあります。
「私は大丈夫」という思い込みが危険を招くことも…。
「生理前の辛い症状を軽視していると、PMSの重症型であるPMDDが潜んでいることに気づけないこともあります。精神の問題に分類されるPMDDは、婦人科だけのアプローチでは難しいケースもあるので、症状があればいち早い対策が必要です」。生真面目で負けず嫌いな人ほど、PMSの症状が現れやすいともいわれており、セルフコントロールしようと頑張りすぎてしまう。婦人科医の助けを求めることも、自分を守るには大切です!
取材、文・小泉咲子
イラスト・二階堂ちはる
※『anan』2021年11月2日号より。
3.月経ともっとラクに付き合えるかも! ピルの取り入れ方
ここまで、月経痛やPMSなど月経にまつわる不調について紹介してきましたが、その解決策の1つとして前向きに考えたいのが、低用量ピルの服用。服用すると、必要なホルモンが十分足りていると脳が錯覚し、本来のホルモン分泌が抑えられ、その結果、様々なメリットが得られます。
「日本ではまだ“ピル=避妊薬”という思い込みが強く、その目的もありますが、のむことで抱かれるイメージを懸念する方が少なくないようです。しかし、ピルは、生理不順の改善、生理痛やPMS症状の緩和などにも使われる治療薬。私自身ものんでいますが、多かった経血量が減って、期間も数日で終わり、快適に生理期間を過ごせています。ただ、ピルは血栓症発症リスクの問題で、40歳以上の方がのみ始めることは基本的にはできません。悩んでいる方は、すぐにでも医師と相談の上、服用を始めてほしいというのが実感です」
ピルを飲むとこれだけ変わる!
通常、エストロゲン(卵胞ホルモン)は、卵胞が十分に育って排卵すると分泌量が最大になり、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量は、黄体期にピークを迎えます。ピルには、エストロゲンとプロゲステロンが配合されており、女性ホルモンのゆらぎを抑え、それらの分泌量を低く一定に保たせる働きがあるのです。服用期間中は無排卵ですが、服用をやめるとふたたび排卵が始まるしくみになっています。
〈ピルののみ方〉自分が決めた時間に28日間のむのがルール。
- 1日1錠を決まった時間にのむ
- 1日ののみ忘れまでは大丈夫
- 半年に1回はクリニックを受診
ピルは、1日1回、決まった時間にのむことで効果を発揮するので、のみ忘れない工夫をすることが大切です。「服用時間は予定が変わりがちな昼間は避け、朝イチや就寝前などルールを決めておくといいですね。のみ忘れて1日以内なら、思い出した時にのめばOK。それ以上時間が経ってしまったら、1週間の休薬期間が必要になります」
〈ピルの3つのメリット〉ピルは月経のお悩みの救世主!
1.月経痛緩和
2.PMS症状の改善
3.肌荒れ防止
ホルモンバランスを整えるピルをのむと、月経そのものが軽くなり、出血量も減って月経痛も緩和します。また、女性ホルモンのゆらぎが原因と考えられているPMSの症状も、ゆらぎがゆるやかになるため、軽くなると言われているのです。男性ホルモンと似た働きをするプロゲステロンの働きも抑制されるので、肌の状態も整っていきます。
取材、文・小泉咲子
イラスト・二階堂ちはる
※『anan』2021年11月2日号より。
4.ピルにまつわるあれこれQ&A
Q. ピルの副作用って何かありますか?
A. 最初の数か月は軽いトラブルも。子宮頸がん&血栓のリスクはアリ。
メリットが大きいピルですが、もちろん副作用もあるので、しっかりそこは押さえておきたいですよね。
「服用を始めて数か月は、頭痛や気持ち悪さ、不正出血などの軽いトラブルが起こる方もいますが、症状は自然と消えます。また、子宮頸がんのリスクは若干高まりますので、年1回の検診を受けてください。1万人に2~5人ほどの割合で、血管の中に血の塊ができる血栓症の発症リスクも」
Q. 薬が合わない場合はどうしたらいいの?
A. 合うタイプがきっと見つかる! 諦める前に医師に相談を。
現在、日本で処方されている低用量ピルには、ジェネリック医薬品を含めて10種類以上。
「それぞれ含まれているエストロゲンとプロゲステロンのバランスが違うので、最初に処方されたピルが合わない人もいます。しかし、複数種類あるということは、合うものもあるはず。薬が合わないと辛くて、服用を諦めてしまいそうになりますが、やめる前に一度、婦人科医に相談してみてください」
Q. ピルのオンライン処方って、本当に安全なの?
A. オンライン処方でも定期的な対面受診と組み合わせれば大丈夫。
オンライン処方は、定期的に通院する必要がなく便利なシステム。
「のみ始めて1~2か月は血栓のリスクが高いので、対面で診察を。それ以降も、オンライン上で医師の問診があり、気になることは相談できますから、安心して利用してください。半年に一回は、対面で受診するとベストです。ただし、内膜症がある人は、3か月に一回のペースで、エコーで経過を診る必要があります」
スマルナ 累計60万人(2021年9月現在)に使用されている、ピルのオンライン診察サービス。問診受付は24時間対応可能。
オンライン処方の4STEP
教えてくれたのは…
お話を伺った方:岡田有香先生
日本産科婦人科学会専門医。聖路加国際病院女性総合診療部に勤務。自身のインスタグラム(@dr.yuka_okada)でも月経困難症や、不妊治療などに関する情報を発信。
取材、文・小泉咲子
イラスト・二階堂ちはる
※『anan』2021年11月2日号より。
5.ピルも味方につけて、月経と向き合おう
ピルと聞くと“避妊するためだけのもの”と思っていた人もいるかもしれませんが、現在では月経に関する悩みを緩和するために服用している人も多くいます。
月経痛やPMS、PMDDに悩んでいる方などは、一度専門家の先生に相談して体にあったピルを見つけることで、月経に関する悩みを緩和できるといいですね。
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