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熱帯夜でもグッスリ眠れます! …睡眠のプロ推奨の入浴法と寝汗対策

長く続く暑すぎる夜。寝汗びっしょりで、毎朝シャワーが欠かせないかたも少なくないようです。汗には、いい汗と悪い汗があります。いい汗ならば、深部体温を下げてくれて快適にお休みできますが、悪い汗なら臭いの元…。今回は、睡眠中の寝汗対策について、眠りとお風呂の専門家、SleepLIVE(株)代表の小林麻利子さんに伺いました。

いい汗と悪い汗

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睡眠の観点からいうと、就寝中のいい汗というのは、寝始めてから3時間以内の汗を指します。身体でいうと内臓、頭でいうと脳などの深部体温は、就寝約2時間前から、だいたい早朝4時にかけて徐々に低下していきますが、深い眠りになればなるほど深部体温がしっかり低下し、その際に発汗します。ですので、その時間の汗は、深い眠りに到達するために不可欠な汗で、むしろかきたい汗と言えます。

悪い汗というのは、朝方の汗。本来ならば早朝4時から起床時刻に向かって深部体温が上昇していくので、汗はかきにくいはず。しかしその時間帯に汗をかいているということは、寝室や寝具の環境が悪いか、または睡眠のリズムが乱れている可能性があります。毎朝シャワーを浴びなければならないほど汗をかいているならば、なんらかの対策が必要と言えます。

睡眠の質を整える

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いい汗をかくために、寝始めてから3時間以内の睡眠の質を上げていきましょう。夜の睡眠のためには、日中の活動量の向上が不可欠。起床後2時間以内に日光浴をする、室内でいいので19時前後に心拍が上がる運動をする、就寝1時間半前にお風呂に入る。日中に深部体温をしっかり上げておくことが、夜の深部体温の低下につながります。

また就寝前15分間は、副交感神経を優位にできる呼吸法を行っていきましょう。1呼吸10秒で完結する呼吸で、特に吐く息を長くしていくことで、心臓の副交感神経の活動が活発になり、脈拍が遅くなっていくことが実証されています。4秒吸って6秒吐く、でもいいですし、2秒吸って8秒吐くのでもいいです。ただ、しんどいと感じる呼吸は副交感神経の活動を抑制することがわかっているので、はじめは秒数を少なめにし、徐々に長くしていきましょう。照明を消していつ寝てもいいという状態にしてから、行ってみてくださいね。

お風呂で深部体温をあえて上昇させてぐっと発汗させよう

最近、熱中症予防のために、外出を控えるようにと言われることが多くなったので、昼間は汗をかかないというかたもいらっしゃるようです。そういった場合は、汗腺を鍛えるためにも、お風呂であえて、汗をかきましょう。

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夏のお風呂の入り方には2種類あります。1つめは、皮膚表面の血流をよくするためにぬるめのお湯に入ることです。血管が拡張することで深部体温が下がりやすくなり、リラックス効果もありますので、日中に血圧が高いかたにもおすすめの入りかたです。2つめは、深部体温を一時的に上昇させる、40度のお風呂に15分浸かる入りかたです。深部体温が約0.5度上昇することが分かっているので、入浴後は体温を下げるために発汗します。お好みに合わせてお風呂に浸かっていただいたらいいのですが、日中活動量が少ないかたは、ぜひ2つめの入りかたをしてみてください。

一時的に深部体温を上昇させることで、入浴後、平熱に戻ってから通常よりも急激に深部体温を低下させることが可能になります。暑くて寝苦しいという状態は、身体の内側に熱い熱がこもった、熱ごもり状態です。この入浴を行うことで、快適にお休みすることが可能になります。

汗がひいてからお休みする

お風呂から上がったら発汗しています。この時にかいている汗は、お風呂で一時的に深部体温が上昇した後、平熱まで下降させるための汗です。その汗がしっかり引いてから、お休みすることで、深い眠りに繋がる深部体温の低下および、発汗があるのです。

お風呂上りに汗が出ている状態でパジャマに袖を通してしまうと、汗でパジャマがべしょべしょに。かといって、裸のままでエアコンの効いた部屋にいると、気づいたときには身体がすっかり冷えてしまった…という状態にもなりかねません。そのため、夏こそバスローブは必須。天然素材で汗を吸着してくれるものがオススメです。

ドライヤーをかけるときは、暑くて汗がさらに出てしまいやすいので、扇風機の風を浴びながら、「暑い」という不快感情を一切抱かぬようしっかり対策をとっていきましょう。そのあとは家事や仕事はもちろんもってのほか。お風呂と睡眠は1セットと考え、薄暗い居間や寝室でストレッチやアロマテラピーなどをしながらリラックスして、汗が完全にひいてからお休みしましょう。

寝具は天然100%で寝床内をベストに整える

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夏用の寝具というと、接触冷感の素材が多く出回っています。エアコンの効いた店内であれば、触り比べをすると一目瞭然! とっても快適~となりますが、このような素材は、汗をかいた状態では、汗を吸着して外に逃がす機能が低いことが多いのです。また、店内のかなり冷えた空間であれば快適ですが、自宅のしかもお布団の中であれば、どんどん湿気がたまっていき、汗が肌にまとわりついた不快状態になる可能性があります。

夏は、触った瞬間の心地よさよりも「就寝中の汗の行方」を考慮した天然素材100%の素材がベスト。吸放湿性や通気性に優れているので、就寝中ずっと快適にお休みすることが可能になります。

枕カバーで脳の体温を下げよう

脳は体よりも快適温度が低くなります。脳の深部体温をしっかり下げることで睡眠の質も上がります。ですので、枕はとても大切。でも、通気性に特化した素材が使われている枕は、頭の形や首の湾曲など個人差がある体にぴったりフィットさせるには、少し難しいものが多いです。せっかく通気性がいいのに、私には高さが合わない…といったことも少なくありません。

なのでせめて、枕カバーで通気性をよくしていきましょう。ポコポコとした、細やかなキルト素材になっている枕カバーは、肌との間に空気の層があるので、通気性がよく、汗を外に逃がしやすくしてくれます。また素材は、麻が入っている天然素材100%がベスト。

就寝後は、枕は立てかけたり干したりし、枕カバーは下着同様毎回洗うようにして、清潔を保ちましょう。汚れが蓄積しないようにすることで、さらに、就寝中の汗を放散する機能が高まります。

まだまだ暑い夏は続きます。暑くて汗が出て不快…という状態を放置せず、快適にお休みができるよう、ぜひ工夫をしてみてくださいね!

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眠りとお風呂の専門家
小林麻利子さん

同志社大学卒業、京都市出身。SleepLIVE株式会社代表取締役社長。生活習慣改善サロンFlura主催。公認心理師。科学的根拠のあるデータや研究を元に、睡眠と入浴を中心とした生活習慣を見直すことで、自律神経を改善していく指導が人気。約3,000名以上もの悩みを解決し、テレビや雑誌など、多くのメディアで活躍中。不規則な生活になりがちな、芸能人やモデル、アナウンサーへも指導。

企業向けには、健康経営や睡眠関連事業支援などを行う。著書に『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)『不美人習慣を3日で整える熟睡の練習帳』(G.B.)など多数。プライベートは、3歳児と0歳児の母。

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