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30年後には“おいしいコーヒー”が飲めなくなる…!? コーヒー「2050年問題」を解説します

仕事中やカフェで友人と会話するときなど、さまざまなシーンでコーヒーを楽しむ人も多いでしょう。最近はリモートワーク中にコーヒーを飲む人も増え、もはや生活の一部だという人もいるかもしれませんね。そんな中、実は今後コーヒーの生産が危機を迎えると言われています。一体コーヒーの生産活動に何が起きているのか、スターバックスが開催した勉強会の内容をもとに紹介します。

コーヒーの年間消費量はどれくらい?

30年後には“おいしいコーヒー”が飲めなくなる…!? コーヒー「2050年問題」を解説します

人々の生活に深く根付いているコーヒー。みなさんは、1年間にコーヒーがどれほど消費されていると思いますか?

実は、世界において年間5,000億杯ものコーヒーが消費されているんです(※1)。コーヒー消費量が世界で4番目に多い日本は、1週間に1人当たり11.53杯飲まれていると試算するデータもあります(※2)。

現在でも多くの量が消費されているコーヒーですが、今後はコーヒーへの需要が3倍になるという見通しもあるのだとか(※3)。なお、今までコーヒーがあまり飲まれなかった地域で、カフェができたりコーヒーを飲用する文化が生まれたりすることが消費量が増える要因だと言われています。

※1 Starbucks Coffee Academyの調査
※2 全日本コーヒー協会,2020の調査
※3 全日本コーヒー協会,2020の調査

コーヒーの未来を揺るがす「2050年問題」とは

多くの人に親しまれ、将来的にも需要の増加が見込まれている一方、“コーヒー2050年問題”によって人々の未来からコーヒーが奪われてしまうという予想も出てきています。

コーヒーは主にアラビカ種とロブスタ種といった2つの品種から作られているのですが、コーヒー2050年問題によって2050年までにアラビカ種のコーヒーを栽培するのに適した土地が50%減少してしまうのではないかと言われています。

では、なぜ土地の減少が懸念されているのでしょうか?

それは、地球上の気候変動によって4つのリスクが高まる恐れがあるからなのです。

リスク1 寒暖差の減少

1つ目のリスクは、寒暖差が減ってしまうことです。

そもそもコーヒーに必要だとされている環境要素は、標高・寒暖差・微気候(※4)の3つです。アラビカ種を育てる標高900mから1,800mの土地では、微気候と寒暖差が保たれているため生産に好条件なのです。

特に寒暖差があることによってコーヒーの実がゆっくりと成熟するため、よりおいしいコーヒーを作るために寒暖差は重要だとされています。

しかし、最近では地球温暖化が進んでいて、寒暖差が減少すればコーヒーの実の品質が落ちてしまう危険性があるのです。

したがって、寒暖差のリスクを回避するためにはより標高の高いところで生産せざるを得ません。より高い地域で生産するためには森林伐採をする必要があり、樹木の減少がさらに気候変動を進めるという悪循環が発生する可能性もあるのです。

※4 温度、日射量、降水量の3つがコーヒーの栽培に適している気候と定義

リスク2 降雨量のばらつき

2つ目は、年間での降雨量がばらついてしまうリスクです。

雨季と乾季のバランスが崩れるとコーヒーの実が生育するサイクルが乱れてしまうと考えられています。せっかく成熟した実が雨によって枝から落下したり、発酵して風味が劣化するなどして、収穫量が減ってしまう恐れがあります。

生産者も雨季のタイミングを把握するのが難しくなるため、実が完熟する前に収穫しようとします。成熟しきっていない実は、コーヒーの品質にも影響を与え、おいしいコーヒー豆の生産が難しくなるのです。

リスク3 多湿

湿度が多いことも、コーヒー生産のリスクになると言われています。

湿度が多いと、さび病の蔓延につながると言われています。さび病とはさび菌が広がる病気であり、さび菌によって葉が黄色に変色してしまいます。

葉が変色すると光合成がうまく行われず、葉が落ちて木が枯れてしまうことも。さび病にかかると一気にその菌が木全体を襲い、最悪の場合農園全体にまで影響が及びます。

リスク4 害虫の増加

4つ目は、害虫が増えることによるリスクです。

気候変動によって温度が上昇すると、コーヒーベリーボーラーという虫が発生します。コーヒーベリーボーラーはコーヒーの実を食べてしまうため、収穫量にも影響すると考えられます。

2050年問題に対するスタバの取り組み

以上のリスクから、サステナブルな栽培が難しくなり、コーヒーの栽培を中断・放棄する生産者も増えると考えられます。

コーヒーの未来を奪う2050年問題が危ぶまれる中で、スターバックスは今後も人々がコーヒーの味を楽しめるようさまざまな取り組みを行っているとのこと。

その1つとして、コーヒーの研究開発や生産支援を強化する取り組みがあります。世界にあるコーヒー生産の土地10か所において生産者の支援を行うファーマーサポートセンターという拠点を作り、現地の農学者とともに生産をサポートする体制を敷いています。

また、気候変動による影響やさび病にコーヒーが耐えられるような品種や栽培技術を生産者に教えたり、コーヒーの研究開発がある「ハシエンダ アルサシア」という自社農園を構えたりなどもしているんです。

ファーマーサポートセンターや「ハシエンダ アルサシア」では、コーヒーを生産する農地を改善するために、シェードツリーを植える活動や、水質・土壌・害虫の防除法といったノウハウを生産者に提供する取り組みを進めています。

コーヒーを守るために人々ができること

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コーヒーを守るためには、企業だけでなく人々による努力も必要でしょう。

そのためにまずできることは、生産者の生活と環境をサポートするエシカルなコーヒー豆を使うことです。加えて、環境負荷を抑えるために、紙コップなどではなくマイタンブラーでコーヒーを飲むことも大切です。

タンブラーを持っていない人も、コーヒーの日である2021年10月1日(金)から、ぜひマイタンブラーを使っておいしいコーヒーを楽しむ習慣を作ってみてはいかがでしょうか。

コーヒーが危機を迎えていることを知らなかったという人も多いでしょう。これから先もおいしいコーヒーを味わうために、この機会にぜひ、身近なことからできることを始めてみませんか?

【参考】
©スターバックスコーヒージャパン株式会社

©monticello/shutterstock
©Ilja Generalov/shutterstock
©HAKINMHAN/shutterstock