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女性ホルモンとうまく付き合っていくために。オトナ女子が知っておきたい、不調とバイオリズム。

今回はホルモンバランスの乱れと、それによって引き起こされる女性特有の様々な不調についてご紹介。女性ホルモンに関する正しい知識を身につけて、日常の当たり前を見直しましょう。

そもそも、女性ホルモンってなに?

女性のココロとカラダに、大きく影響する女性ホルモン。にもかかわらず、その働きや整える方法をよく知らない人も。そこで、産婦人科医が女性ホルモンの基本をレクチャー。正しい知識には、より快適な人生を送るヒントがたくさん!

角ゆかり先生

お話を伺った方:角ゆかり先生
産婦人科専門医、虎ノ門ウィメンズクリニック院長。東京女子医科大学卒業。2013年、メルボルン大学ウィメンズヘルスマスター取得。症状以外にも、患者の話に耳を傾ける診療方針で信頼されている。


ホルモンバランスの乱れは心身の不調に大きく関わる。

右:エストロゲン 左:プロゲステロン

女性ホルモンとは、卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンの一般的な呼び名のこと。

「生理や妊娠だけでなく、心身の不調にも深く関わっている女性ホルモン。後々、不妊で悩んだりしないように、女性ホルモンに関心を持ってほしいですね」

そう話すのは、産婦人科専門医の角ゆかり先生。

「女性ホルモンの分泌は、脳の視床下部が司令塔となり、調整されています。視床下部は、神経系統のコントロールタワーのすぐ隣にあるので、強いストレスを受けると視床下部から指令を受ける女性ホルモンの分泌も乱れてしまうのです。ストレスには、過剰なダイエットによる身体的ストレスも含まれます。過剰なダイエットをすると、脳が『身体的危機の今は新しい生命を育てられない』と判断し、血液を体外に排出する生理を止めてしまいます。無月経は不妊になることもあるので注意を」

生理の約1週間前から、イライラしたり、いつも以上に甘いものを食べたくなったり、PMS症状が表れるのも女性ホルモンの影響。

「PMS症状対策で重要なのは、それがPMS症状なのだと自覚することです。あらかじめどんな症状が自分に出るのか知っておけば、周囲に『この時期は機嫌が悪くなるかもしれない』と伝えておくことで大きなトラブルを防げますし、食欲が増すケースも、脂肪分の多いスイーツを食べる前にカロリーが低く栄養価の高い野菜のスープなどでお腹を満たしておくといった対策がとれます」

では、根本的に女性ホルモンを整えるには、どうしたら?

「基本的なことですが、栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送ることが、女性ホルモンにとっては大切です。もちろん、生理に少しでも異常があったり、PMS症状が辛かったり、ホルモンの乱れを感じたらなるべく早く、婦人科を受診してください。その際、月経周期がわかっているとスムーズです。自覚症状がない方も、いつかの時のために、月経周期のチェックを」

エストロゲン

  • 肌にハリが出て、髪もツルツルに
  • 自律神経や脳の働きをよくする
  • 内臓脂肪がつきにくくなる

卵胞ホルモンとも呼ばれ、いわゆる女性らしい丸みを帯びた体型を作るホルモン。肌や髪の潤いを守る、代謝をアップするなど、女性にとってうれしい作用も多い。40歳を過ぎると分泌量が減ってホルモンバランスが急激に崩れ、更年期を過ぎるとほとんど分泌されなくなる。

プロゲステロン

  • 体に水分を溜め込み、むくみやすくなる
  • 食欲が旺盛になり、代謝が鈍くなる
  • 疲れやすくなる

排卵直後から分泌量が増え、子宮内膜を柔らかくして妊娠に備えるホルモンで、黄体ホルモンとも呼ばれる。プロゲステロンが優位な黄体期は、妊娠のために体が水分や栄養を溜め込もうとするため、むくみが出やすく、食欲が促進される場合も。精神的にも不安定になりやすい。

ホルモンバランスの入れ替わりで心身に変化が!

女性の心と体は、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンの影響を受け、約1か月周期で変動。たとえば、エストロゲンが優位になる生理直後は、肌がきれいになるが、プロゲステロンが優位になると、肌が脂っぽくなってニキビが増える。精神的に不安定になりやすくなることも。

ホルモンバランスの入れ替わり

女性ホルモンにまつわる年齢別トラブル

20代

20代:お腹が痛いけど今日は女子会が… プレゼン前なのに貧血で倒れそう…

生理による不調は大切なメッセージ。体からの大切なメッセージに目を背けないこと。

20代に入ると生理が安定する人が大半だが、量や回数が多い、生理痛がひどいなど、生理そのものの悩みが大きくなる人も。「量や回数が多い方がなりやすい貧血は、早めに治療を。慢性化すると生活上で辛さを感じず、せっかく定期健診で貧血が判明しても、治療を後回しにしがち。体が重点的に血液を送るのは内臓で、髪の毛がパサパサする、爪が割れる、肌が荒れるなど、体の表面に症状が出てきた段階では、かなり対応が遅れてしまっています」

30代

30代:私はキャリアを選ぶわ! 早く夕飯作らなくちゃ…

多くの方のライフステージが変化する時期。出産などによって、大きくホルモンバランスが乱れることも。

30代は、子宮内膜症や子宮筋腫に気をつけたい時期。「将来、出産を考えている方にとっては不妊の原因にもなるのが内膜症や筋腫。早い時期から治療していれば、進行を止めて、自然妊娠できたかもしれないと、後悔なさる方もいらっしゃいます。早くからの検査や治療が大切なのは、子宮頸がんも同じです。30代に入ったら、必ずがん検診を。また、生理不順からくる無排卵も不妊の可能性が高くなります。ご自身の将来のために、放置しないで」

最近よく聞く、プレ更年期ってなに?
30代後半から、体温調節がしにくくなるなど、更年期のような症状が出始めること。「プレ更年期は、子育てや仕事などのストレスで心身に不調が起こります」

40代

40代:更年期って… こんなに辛いの?

更年期を迎え、ホルモンの分泌が減少。それによって、体の不調が起こりやすい時期。

更年期とは、閉経前後の10年間をさし、日本人女性の閉経の平均年齢は50.5歳なので、一般的には45歳から55歳が更年期にあたり、心身に不調が表れる。「ホルモンの分泌量が減り、今までのようには頑張れなくなります。生理も不順になり“閉経が近づいたのかも”という不安感が加わり、精神的な症状が強まる方も。更年期が始まるまでに夢中になれるものを見つけておくといいですね。更年期の辛さが大きく異なります」

50代

50代:趣味のフラワーアレンジメントのお教室を♡ 憧れのヨーロッパ周遊!

日本人女性は平均50.5歳で閉経 その後の人生をどう生きるか? 早くから想像しておくことが大切。

日本人女性の9割は、45歳から55歳までに閉経する。「閉経後は、子宮や卵巣が萎縮したり、陰部にかゆみや痛みが表れたり。セックスが辛くなる方もいます。更年期から閉経後の変化に悩んだら、婦人科医に相談を。今は我慢する時代ではありません。閉経してからも、人生は続いていきます。この長い時間をいかに健康に生きるかがとても大切。ホルモン治療に怖い印象を持っている方には漢方もありますし、前向きに考えてほしいですね」

※『anan』2021年12月8日号より。